2本の “1959” Jazzmaster について ~後編~
こんにちは。
今回は前回に引き続き、「2本の “1959” Jazzmaster」について個人的に気になった部分を取り上げていきたいと思います。
早速、より細かな部分も見てみましょう。
こちらはヘッド表面です。
ストリングガイドに注目してみると、その形に違いがあるのがわかります。
オリジナルでは長方形の小さなプレートをそのまま曲げて形が作られていますが、リイシューでは端にテーパーが入っており曲げ方も異なっています。
またよく見てみると表面の文字にも違いがあるのがわかります。
オリジナルでは「Fender」のロゴや「WITH SYNCRONIZED~」の文字や「OFFSET~」のデカールのみとなっていますが、リイシューではFenderロゴの下、「PAT.」の後にナンバーが刻印されています。
フローティング・トレモロ・ユニットでも同じようなことが起きています。
オリジナルには「PAT. PEND」の文字が刻印されており、リイシューでは「PAT.」の後にナンバーが刻印されています。
ギターやパーツにもよく記載があるこの「PAT.」というのは「Patent」=「特許」のことで、PAT.以降に記載の番号は特許の申請が認められ発行された番号、ということなのです。
しかしながら1959年時点ではまだ開発および販売開始後間もなかった為、特許の申請が間に合わず「PAT. PEND」=「特許出願中」との刻印があったり、後年のモデルで特許番号が改めて記載されたり、ということが起きるのです。
ではなぜ、この 1959 Jazzmaster Journeyman Relic はこれほど仕様の差異があるにも関わらず “1959” と銘打たれたのでしょうか。
それは、ローズウッド指板がスラブ貼りである限定モデルであることを顧客に伝えたかったから、だと個人的には考えます。
スラブ貼りのローズウッド指板は同じFenderのストラトキャスターでも大いに人気があり、強い需要があるように思います。
その人気のスペックを 1962 Jazzmaster Reissue に搭載し、さらに9.5R×ナロートール6105フレットで演奏性にもアプローチを行い、カスタムカラーとレリック加工でパッケージングした最高の限定モデル、それがこの「1959 Jazzmaster Reissue」の正体だったのです……!
Fenderはその歴史の上でも様々な需要に応えるべく、より高度に「楽器」というものを「工業製品」として発展させてきたように思います。だからこそ過渡期には前年との混在仕様が誕生したり、現在でも銘と異なった仕様のものが誕生したり……しています。
僕は楽器やブランドの歴史の試行錯誤を感じられるそういった部分が本当に好きですし、完璧でないからこそ完璧を求めて細部まで注目したくなります。
こういった楽器ブランドの試行錯誤たちについては、また今後も取り上げてみたいと思います。
それでは。