Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 10

前回はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/larry-dimarzio-9/

ビル・ローレンスとビルのもとで働いている従業員のアーティーが言い争いをしていたのを見た1~2週間、ラリーにパニック状態のアーティーからの電話がかかってきました。

内容は、
“ビルがギブソンに持っていくための見本となるギターを急いで完成させなきゃいけないんだけど、配線とか何も分からないから、手伝ってくれないか?”
というものでした。
(アーティーはピックアップの巻き方だけを知っているだけでギターに関するその他のことは全く知らなかった模様)

“まぁまぁ落ち着いて。大丈夫だから、うちのアパートまで持ってきてくれればやってあげるよ”
とラリー。

そうして持ち込まれたのはメロディーメーカー。

簡単な配線作業だけで済むと思っていましたが、ピックアップ自体も完成しておらず、ピックアップキャビティのサイズは合わず、キャビティを大きくする必要もありました。(この状態で丸投げとはビルもなかなかですね)

アーティーはビルのピックアップワインディングマシーンも持ち込んでおり、それをキッチンテーブルにセット。

それは木台、回転数を数えるカウンター、ミシンのモーター、On/Offスイッチで出来た驚くほどシンプルな作りでした。

ラリーにとってはまさに目から鱗。

アーティーは意図せずして、その頃ラリーが抱えていたピックアップのワインディング問題を解決してしまいました。

ビルからの細かな指示は全くなかったようですが、ラリーは彼がギブソンへのより良いプレゼンテーションが出来るように、ルックスやプレイアビリティも考慮して、新しいピックガードを製作したり、フレットの擦り合わせました。

エスカッションも改造して、ピックアップが平行かつ弦に近づくように調整。

ビルのお気に入りだったミニトグルスイッチを使用した直列&並列接続が可能な配線に。(8種のサウンド)

その夜遅くにようやくギターは完成。

見た目と演奏性ともにラリーとしても納得の仕上がりになりました。

アーティーはラリーに感謝しつつ、ギターをビルに渡すために帰って行きました。

ところがその1週間後、またアーティーの電話。

“ビルが消えた。もし店に残したギターを回収したかったらすぐに店に来てくれ”

“ふざけるな!!!”とラリー。

激昂したラリーが店に到着。

アーティーから
“ビルはギブソンでの仕事を得て、もう店には帰ってこないみたいだ”
と聞かされます。

驚いたことに、ビルはショップの家賃を数ヶ月滞納しており、大家はその日に鍵の変更を行う手筈になっていました。

アーティーの給料も未払いに、、、(ちなみにラリーはリペアの都度もらっていたので、未払いはなかったそう)

自分のギターをまとめたラリーは店を見渡しました。

磁石、ボビン、ピックアップカバーのみが残されただけのもぬけの殻。

アーティーに何か欲しいものはあるか聞いてみましたが、なにもいらないと答えました。

ピックアップの仕事やビルとの関係もすべて諦めた様子だったそうです。

アーティーへの支払いも最後のメロディメーカーの支払いもそのままにまさに”夜逃げ”同然にビルは消え、ラリーにとっても夢だった”ギブソンでの仕事”も消えてなくなりました。

数年後(ビルがギブソンを去った後)、ビルが48番街にあるグラシンズ・ミュージックで働いていたときに再会を果たします。(その面下げて会うのか想像がつきませんが、、、)

ラリーはディマジオのピックアップを店に届けた時で、ビルはニューヨークを出た当時のことについて一言も言わなかったそうです。

その後は友好的な関係??を保ち、ビルは世界中の展示会でディマジオのブースにいつも立ち寄りました。

ディマジオの成功を密かに誇りに思っているのでは?と、ラリーはそう思っているそうです。

~続く~

~続く~

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