~Tom Murphy Guitar Preservation~ Gibson Agedモデル誕生まで

トムの経歴を紹介した前編&中編はこちら
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/tom-murphy-gibson-aged/
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/tom-murphy-gibson-aged-2/


1993年12月、ついにカスタム・ショップとして独立したファクトリー”Gibson Art and Historic”が立ち上げられました。

1994年、ここからのトムはおそらく馬車馬のように働いたのではないでしょうか?

94年11月3日までに作られたカスタムショップのほぼ全てのサンバーストと相当数のゴールドトップをペイントしたということです。

そしてこの年の暮れには、5年間勤続したギブソンを退社することになります。(理由は語られていません)

ここで故郷であるイリノイ州マリオンに戻ることにしたトムは、父の持っていた小さなガレージで ”Guitar Preservation”というリペアやヴィンテージのレストアを専門とする自身の工房をオープンします。

すぐに沢山のお客からのギターの塗装などのレストアの注文が舞い込みます。この時点でトムは通常のリペアマンでは不可能とも言える数百に及ぶ塗装をギブソンで経験しており、それを知っている顧客たちからの依頼が殺到したようです。

オープンから間もないある日、オールゴールドのファイアーバードのネックとヘッドを直すレストアの依頼を受けることに。

一月程の時間かけてヘッド部分を直して、ギターとしての機能的なところは直ったものの、全身にウェザーチェックが入ったボディと塗り直した部分の跡があまりにも”噛み合わない”見た目になってしまうのが、どうしても気になったトム。ここで、直した部分だけが浮いて見えないように、トムは初めてカミソリによるウェザーチェックをつけることに。

この行動が、トムのその後の人生を大きく変える瞬間となりました。

当初、依頼主がどんな反応をするか不安だったトムでしたが、依頼人はその違和感の無い仕上がりにとても満足したようで、“どうやったんだ!?”と驚いた様子だったとトムは語っています。

そうして1994年~1996年の間、ヴィンテージギターのレストア作業の一環として、修復した部分にのみエイジングを続けることになります。

“この時点ではギター全体にやることなどは全く考えていなかった、そんなことして正気を保っていられるか?”
と言っていました。
手作業でのエイジング加工はやはり相当に大変なようですね。
その後、部分的なエイジングを施したギターをギターショーに持っていくと、
”この加工を新しいギターにやれないのか?”
と聞かれることに。(その時は即答はしなかったようです)

そこで、トムは実験的にエイジドギターの制作に取り掛かります。自身の持つ’59レスポール リイシューの1本をリフィニッシュして、ハードウェアなどを酸につけ、塗装のくすみやウェザーチェックを再現しました。

そうした1本を1997年10月のテキサスのアーリントンでのギターショーに展示して、周りの反応を見ることに。

その結果、ディーラーやユーザーからの依頼が殺到。

翌年1998年の仕事は、リイシューモデルのリペイント&エイジング”のみ”となったそうです。

1997年にFenderから”Relic”シリーズが発売を開始されることになり、反響を呼んだことにも後押しされて、Gibsonでもエイジングギターを求める動きが高まりまっていたタイミングでもあり、ギターショーでのトムの作品の噂を聞いたギブソンは1998年にトムに制作を依頼することに。(当初トムはGibsonからの製品化の話に関して懐疑的だったようです)

この年はプロトタイプ的な位置づけで、限定して約50本程度のギターをエイジングすることになりました。

そして、1999年。
かつてのパートナーであるエドウィン・ウィルソンと共に、ギブソン初のエイジドギター“40th ANNIVERSARY 1959 LES PAUL REISSUE AGED”が完成します。

~最終編に続く~

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