[ニコニコ雑記] フラッグシップモデルから考える”当時の音”〜Part.5 1960年代半ば以降編〜
こんにちは、店長の野呂です。
前回に引き続き、フラッグシップモデルと共に時代の音の変化を追いかけてみたいと思います。
今回で最終編となります、長かったですね。
まずは1963年のGibsonカタログから2点、注目したい点があります。
1つ目はニューモデル”Firebird”の登場です。
先進的なデザインはカーデザイナーのレイ・ディードリッヒが担当しており、
ギブソンとしては初のスルーネックを採用したモデルでした。
そしてFirebirdのフラッグシップモデル”FB VII”が、
これまでのギブソンで最も高価なソリッドギターの座を射止めます。
今まで1番高価だったSG Custom :$480
新たな最上位ソリッドギターFirebird VII : $500
またFirebird VやIIIもSG StandardやSpecialと比べると高価に設定されており、
革新的な新モデルとしての威厳が感じられます。
2つ目は、遂に永遠の最上位機種と思われたSuper400より高いモデルが遂に登場いたします。
その名は”Johnny Smith Guitar Cutaway”。
“Walk Don’t Run”の作曲者としても知られるジョニー・スミス氏のシグネチャーモデル。
17インチボディにフローティング・ミニハムバッキング・ピックアップを搭載したフルアコです。
ナチュラルフィニッシュでダブルピックアップのモデルが最高額を叩き出しました。
お値段…$965
ちなみにSuper400CESN…$960
$5ではございますが、大記録です。
続いて1964~65年に配布されたFenderカタログから。
実はフェンダーでジャガーを超えるフラッグシップモデルはもう登場しないのですが、
ここで現在でも多くのギタープレイヤーが愛してやまないギターが登場します。
“Mustang”です。
現在では安価に手に入るヴィンテージ・フェンダーの代表格としても有名ですが、
当時のカタログから実はミドルクラスモデルとして投入されていたことがわかります。
価格を見て参りましょう。
高い順にジャガー、ジャズマスター、ストラトが上位機種として君臨していましたが、
その3機種以外の価格は下記の通りです。
Telecaster : $203
Mustang : $184
Esquire : $164
Duo Sonic : $155
Musicmaster : $126
驚くべきことに、テレキャスターとそこまで大きくは変わらない程度の価格設定となっています。
新開発の専用トレモロユニットを搭載していたことからも、気合の入った新モデルであったことがわかります。
カタログの宣材写真で一緒に写っているアンプに注目してみても、
スチューデント・モデルではChamp等の小型アンプなのですが、
ムスタングは”Vibrolux Reverb”となっています。
それにしてもテレキャスターは現在のヴィンテージ市場をみると、
“随分と出世したな”という印象ですね。笑
最後に忘れてはならないビッグイベントが1968年にあります。
“Original Les Paul Models Return!”
そうです、68年に廃番となっていた”レスポール”があのアーチトップのボディデザインで戻ってきたのです!
スタンダード/カスタム共に復刻を果たします。
ここで重要な点として、
エレキギターと音楽にとって大きな大きな進歩が見えます。
それは、“歪んだギターがクールとされる時代が遂に来た” ということです。
この時代になってようやく歪んだギターサウンドが市民権を得るに至りました。
同時に”ファズペダル”など、より長いサステイン求めて機材が進化していくのもこの頃からとなります。
それに加えてこの頃盛んに行われるようになったスタジアムでのライブや、
ワイト島やウッドストックに代表される野外での音楽フェスなど、
より大規模化が進んだロックのステージにおいてレスポールは最適だったことでしょう。
当時最もパワフルでノイズが少なく、大音量でもハウリングしにくい楽器はレスポールだったように思います。
70年代以降、ジミ・ヘンドリックスの活躍もあってストラトが脚光を浴び、
エレキギターの王道といえば”レスポール”か”ストラトキャスター”となっていきます。
現在においても、様々な楽器の選択肢が増えたとはいえその点は変わりませんよね。
当店の在庫の比率も、ストラトキャスターとレスポールが多数を占めています。
50年以上も第一線で活躍するこれらの楽器は多くの人にとって扱いやすく、
音的にもルックスにおいても優れたデザインだったということに感動を覚えます。
それでも、もしもレスポールやストラトキャスター以上に市民権を得るような全く新しいデザインのエレキギターが登場する時代がこれから来るとしたら、それはとても楽しみですね。
今回はこの辺で。