Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 6
前回はこちら。
修理品で大忙しの”The Guitar Lab”に、1本の特別なギターが弦交換で持ち込まれます。
それは”D’Aquisto”のアーチトップ。
ラリーが、これまで見た中で最も美しいアーチトップギターの一つだったそうです。
弦高は可能な限り低く、それでもビビりや音詰まりはなく、全てのピアノように均一に響きました。
全ての作業に細心の注意を払って製作されていることが感じられる1本で、ラリーは特にフレットワークとネックシェイプに感銘を受けたそうです。
ラリーはすぐにチャーリー(“The Guitar Lab”代表)から製作者であるJimmy D’Aquisto(ジミー・ダキスト)の電話番号を聞き、すぐに電話しました。
ラリーはダキストのギターやそのフレットワークがどれほど好きかを伝えました。
“The Guitar Lab”で働いていることを説明すると、ダキストは自分の工房に立ち寄ってはどうかとまさかの提案。
二つ返事でオーケーしたラリーは 1週間後にダキストの工房を訪れました。
ラリーは工房を案内してもらい、彼らは数時間も話しこみました。
Michael Gurian(マイケル・ガリアン)の工房のように小規模な”工場”のようなものを想像していましたが、そこには治具、ボール盤、バフ研磨ホイール、いくつかのハンドツールと本当に必要最低限の工具のみが置かれただけの本当に簡素な空間だったそうです。(機械らしいものがほとんどない)
あの素晴らしいギターを作ったのは、本当にジミーの手と彼の経験だったのだと、ラリーは実感したそうです。
ジミーは自分で作ったフレットファイルとその使い方を惜しげもなくラリーに教授しました。
古くてボロボロになった三角形や平ヤスリから始めること(新しいものは削りすぎるため)、フレット磨きのために多くのグレードのサンドペーパーを使用すること、目の細かいものから始めて最終的には車用のコンパウンドを使用することなど、フレットのための技術やコツを伝授してもらいます。
そうした処理を受けたフレットは、鏡のように美しく仕上げられていたそうです。
翌日、早速”The Guitar Lab”にあるグラインダーとバフホイールを使って、ジミースタイルのフレットファイル(やすり)を作成しました。
ジミーから学んだこととそれまでにチャーリーから教わったことを組み合わせることで、ジミーがやったもののように鏡面のようなフレットにすぐに仕上げられるようになりました。
こうして腕を上げたラリーは、より多くのフレットワークを任せられるようになります。
繁忙し始めた”The Guitar Lab”では多くの従業員の雇い入れを始めました。
その中にはのちにアーチトップギターの名工として知られることになるSherwood T. “Woody” Phifer (シャーウッド・ウッディー・ファイファー)も在籍。
https://www.phiferguitars.com/
ラリーが彼にフレットワークを伝授したそうです。(あっという間にラリーと同様の仕上がりになったそう)
~続く~