エリック・ジョンソンと“ササフラス”のお話。
今回はエリック・ジョンソンがかつて所有していたストラトキャスター、”バージニア”に使用されていたとされる”ササフラス”という木材のお話をしようと思います。
”バージニア”は”Live from Austin Texas”や教則ビデオなどで使用されている
1954年製のストラトキャスターで、2020年にFender USAのStories Collectionと
MBS Limited Editionで復刻されたのも記憶に新しいですね。
名前の由来はボディ内部にあったサインだそうです。
ご存知の通りかなり手が入れられており、リアピックアップはDimarzio HS-2に交換、
フェイズアウトやフロント/リアトーン配線、平らな指板R、ジャンボフレットなど
かなりのこだわりが感じられるギターです。
しかし現在エリック氏は”バージニア”を所有しておりません。
「改造の過程でピックガードに手を加えたら音が変わった」という理由で90年代に手放してしまい、
その後5本ほど54年製ストラトを買い換えたそうですが、似た音のものは見つからなかったそうです。
現在はまた別の1954ストラトを所有しているそうですが、こちらも指板のR修正やリフレット、リアピックアップをDimarzioに交換して使っております。
ボディがオーバースプレーされているそうで、「コレクターズコンディションでは無いから改造できた」
と自身の機材紹介でおっしゃっていました。
さて前置きが長くなってしまいましたが、バージニアにはFenderでは珍しい
”ササフラス”という材が使用されています。
ササフラスはクスノキ科の広葉樹で、主にアメリカ東部に分布して生息しています。
通常はドアや窓枠、家具等に使われることが多い木で、
根から取れた油は石鹸の材料となり、樹皮はお茶や漢方薬となります。
見た目はアッシュに似ているのですがもう少し柔らかく、中心はやや褐色、辺材になるにつれ黄白色に近くなります。
Fenderとササフラスの出会いは1940年代末、Broadcasterのボディ材として
使用が検討されていたのが”アッシュ”と”ササフラス”だったそうです。
しかし上記の通りアッシュに比べ柔らかく、ネジ打ちの際に割れやすいというのがネックだったのか
最終的に製品版で使われたのはアッシュ材でした。
ただ、1950年代でも例外的にササフラス材のボディの個体があるようで、
たまたまエリック氏が当時購入したのがその内の1本だったそうです。
音に大変こだわりのあるエリック氏ですから、ササフラスとアッシュの音の違いを敏感に感じていたのでしょうね。
今回の復刻ではUSA、MBS共にササフラスが使われてましたが、
この材が1950年代以来1度も使われなかった訳ではございません。
Fender Custom Shopの創立30周年を迎えた2017年に
Greg Fessler氏が1960 Stratocasterを製作しております。
しかもフレイムが入っていました。
ササフラス製ボディの楽器は非常に少ないので全てがそうとは言い切れませんが、
アッシュボディの楽器に比べ若干温かみのある音の印象でした。
でもキャラクター的には近い方向性だと思われます
エリック・ジョンソンのファンの方のみならず、
人と違った楽器が欲しい方は1度試してみてはいかがでしょうか。