ジェームス・タイラー その5
前回はこちら。
1993年、サイケデリック・ヴォーミットに続いて、マイケル・ランドウ(Michael Landau)のために”Burning Water(バーニングウォーター)”を製作。
ランドウ氏の当時始めた新しいバンド”Burning Water”からそのまま命名されたこのギターは、多くの人々からの要望を受けて、1994年以降はタイラーのスタンダードモデルとして人気を得ていくことになります。
同年、限定生産のDann Huff Classic、Mangooseなど、数々の限定モデルの生産も精力的に行いました。
その頃もタイラーのショップは創業当時から変わらず、1階建ての平家でトタン板の壁の非常に簡素な建物の中にあり、ショップサインも非常に見つけづらいものだったそうです。
そして多くの注文が入り続けていて、非常に多忙なタイラーギターでしたが、ほぼ全ての作業は手作業で行われていました。
工房には一切のCNCルーターなどのコンピューター制御のマシーンが置かれていません。
同じハイエンドギターというカテゴリーの中にいるSuhrとは真逆のスタイルです。
Suhrについてはこちらをどうぞ。
タイラーでは月20本程度の生産が限界となっているのもうなづけますが、生産性の向上の”ため”だけにマシンを導入する気はないと語っています。
またタイラーは、”ギターは1本たりとも無料で提供したことが無い”と言い切っており、シグネチャーモデルがいかに”実際のライブで使われていない”ということやエンドースの料金に疑問を感じているそうです。
ちなみにタイラーギターを紹介するギター雑誌など記事の大半が、日本もしくはヨーロッパのものばかり。(こちらも少数ですが)
アメリカの記事にいたってはアーティストの特集の中のインタビューでアーティストが使っているギターの軽い紹介程度、もしくは写真のみで登場していました。
複数のアメリカの大手ギター雑誌から、”良いレビューを書くからギターを無償で提供してほしい”との要求をされたことが何度もあったそうです。
タイラーはそれをつっぱねたそうですが、アメリカの雑誌での紹介が極端に少ないのは、これが理由となっています。
“広告を出して、オーダーが増えたところでどうせ生産が追いつかないから、意味ないしね”
とタイラーは語っています。
~続く~