[ニコニコ雑記] 〜Rickenbacker 5th Controlを深掘り〜
こんにちは店長の野呂です。
先日こちらの商品の販売を開始いたしました!
Rickenbacker 1966年製 330/12 (Fireglo) です!
リッケン12弦はとても煌びやかでユニークなサウンドで、これまでも数々の名曲に使用されてきました。
邦洋・時代を問わず、今ではポピュラーミュージックにおける普遍的なサウンドの一つと言っても過言ではないのではないでしょうか。
あのサウンドが欲しい方は是非とも要チェックです!
さて、上記の写真でも確認できるこの”5th コントロール”。(1つだけ小さいサイズのノブ。Mixer Controlとも言われますね。)
皆様はこれがどういった経緯でいつ頃から搭載されたのかについてご存知でしょうか。
機能に関してはよく「フロントピックアップのバランス(出力)コントロールとして働く」と説明されることもありますが、一体どういった仕組みなのか。
リッケン好きの方々にとっては周知のことかもしれませんが、この機会に順を追って説明してまいりたいと思います。
まずは遡ること1960年の下半期。
この頃に”5th コントロール”は初めて登場し、従来ラインナップされていたモデルも含めて様々なモデルに搭載されることになりました。
それ以前の「4ノブ」の時代より、フロントPUとリアPUの音色の違いをより明確にするために、リッケンバッカー社ではリアPUに働くローカット用のコンデンサを搭載していました。(上の写真の小さいコンデンサです。容量は4.7nF=0.0047μF。リアVolポットとPUセレクタースイッチの間に取り付けされています。)
これによってリアPUがより”トレブリー”な音色となり、フロントの太く甘い音色とのキャラクターの差がより明確になるという訳です。
ただしこの戦略には大きな落とし穴がありました。
ローカット用のコンデンサによってリアPUは70%ほどの出力にまで落ちてしまい、以下のような問題が生じていたのでした。
「リアとフロントを切り替えた時の音量差がかなり気になる」
「センターのミックスポジションにした時に、リアの成分が少なくほとんどフロントみたいな音に聴こえる」
これらの問題を解決するために加えられたのが、”5th コントロール”という訳ですね。
フロントPUの出力をおおよそ50〜100%間で調整することが可能となっています。
使い方の手順が以下の通りです。
- PUセレクターを動かしながら、リアとフロントが同出力となる位置に5th コントロールを調整する。
- センターの位置にして、そこから5th コントロールを微調整して好みの音色に調整する。
これだけです!
ここでこのような声が聞こえてきそうですよね。
「いやいや、そもそもフロントとリアのボリュームが個別に用意されているのだから、フロントVol.を絞れば5th コントロールなんて不要ではないか。」
わかります。確かにそんな気がします。でも実はそんな単純は話ではなかったのです。
これはVol.ポットの特性に起因しています。
絞っていくとどうしても高域が他の帯域よりも落ちて聴こえてしまうので、そのような事態を避けるためにわざわざこのような5つ目のコントロールが用意されています。
ちなみに、リッケンバッカー社は1984年よりこの”リアPUにローカット用のコンデンサを搭載する”のをやめています。
(上の写真は現在在庫しているRickenbacker 2000 1997 Rose Morris Reissue (Midnight Blue)。確かに2つのトーンコントロール用のコンデンサ以外には何も見当たりません。)
実はこのリアPUの回路的な要因も、現行品とヴィンテージの大きな違いの一つかもしれませんね。
確かにヴィンテージの方がリアはシャキシャキしていてローパワーな印象があり、非常に味わい深い音色に感じます。
逆にヴィンテージと比べて太く元気な音の現行品にもモダンな良さがあるので、是非その違いを体感しにいらっしゃってください。
今回はこの辺で。