[ニコニコ雑記] Fender製品コントロールのバリエーション その7 ~Jazzmasterのコントロール~
こんにちは、店長の野呂です。
これまでのコントロールの話の続きで、今回はJazzmaserの配線に関して取り上げます。
ジャズマスターは様々なスイッチがついていて、実際に触ったことがない方からすると中々に分かりにくい部分がある楽器かもしれません。
まずはそれぞれのコントロールの役割からおさらいしてみましょう。
メインとなるコントロールは写真手前の、3way PUスイッチ、マスターボリューム、マスタートーンです。
これは至ってシンプルなコントロールで、PUスイッチもごく一般的な以下の役割です。
ポジション1:リアPU
ポジション2:リア&フロントPUのパラレルMIX
ポジション3:フロントPU
さて、それではジャズマスターの大きな特徴の一つである6弦側のピックガード上の”プリセット・コントロール“をみてみましょう。
1つのスイッチと、2つのホイール型のツマミが搭載されています。
このスイッチをONにすると、3way PUセレクターの位置に関わらずフロントPUが選択され、マスターボリュームとマスタートーンも無効になります。
そして、プリセットスイッチON時のフロントPUの音量とトーンをそれぞれホイール型のツマミで調整します。
現代では何を目的にしているのかがイマイチ分かりにくいこのプリセット回路ですが、バッキングとリードの際の音色をそれぞれあらかじめ決めておくことで、ワンタッチでの音色切り替えを可能にすることを想定していたことでしょう。
ペダルタイプのエフェクターはおろかアンプのチャンネル切り替えすら存在しなかった50年代当時としては非常に画期的な機能だったと思われます。
ここから細かな点、それぞれのポットやコンデンサーの数値に着目してまいりましょう。
[メインコントロール]
・ボリュームポット:1MΩ
・トーンポット:1MΩ
・コンデンサー:0.03μF
[プリセットコントロール]
・ボリュームポット:1MΩ
・トーンポット:50kΩ
・コンデンサー:0.02μF
メインとプリセットで、それぞれ異なる数値のものが使用されていることがわかります。
特に大きな数値の違いが設けられているのが、トーンポットです。
ポットは数値が低いほど高域が抑えられる特徴があるため、50kΩのポットが使用されているプリセットコントロールの方がメインコントロールのフロントPUを選択した時のサウンドより丸く角の取れたサウンドとなっています。
(これはそれぞれのトーンをMAXにした際にも明らかに違いが感じられます。)
また、メインコントロールのポットはストラトキャスターやテレキャスター(’69まで)で使用されていた250kΩよりかなり大きい数値の1MΩが使用されています。
さらに、コンデンサーも69年までのストラトキャスター(0.1μF)やテレキャスター(0.05μF)で使用されていたものと比較して、数値が小さくこもりにくい0.03μFのものが使用されています。
甘く中域が豊かな特性のPUとのマッチングを考慮し、ポットやコンデンサはあえて高域特性に有利なパーツ選択をしたものと考えられます。
現在ではノイズ対策や誤操作防止の観点からプリセットコントロールをキャンセルして使用している方も多く、それも合理的な選択肢の一つだと思いますが、個人的にはプリセットを選択した時ならではのメロウなサウンドもジャズマスターらしいサウンドの一つだと感じています。
また、プリセット側のボリュームを”0″に設定し、スイッチのON/OFFを繰り返すことでキルスイッチのような極端なトレモロ効果を得ることも可能です。(力任せにカチャカチャしてしまうと故障の原因となりますので、気をつけてください。)
トーンを”0″にしておいて、コンプ感の強いディストーションをかけることでシンセ風のサウンドにワンタッチで切り替えるという使い方も考えられます。
現行品では省略されてしまうこともあるこのプリセット回路、見た目的にも機能的にも搭載されていないと少々寂しさを感じるところです。
American Vintageシリーズやカスタムショップのリイシューモデルでは、プリセット回路とメイン回路の双方でポットの数値はヴィンテージと同じものが使用されていることが多いです。
最近はカスタムショップ製であえてストラトのような250kΩのポットをメインコントロールに採用したジャズマスターもラインナップされていますが、ピーキーなキンキンした音が気になる場合には効果的かもしれません。
コンデンサーの数値は異なる場合があり、現行品では0.1μFのものがメインコントロールに使用されている場合もありますので、試しに数値をヴィンテージと同様の0.03μFに変更してみても面白いでしょう。
今回はこの辺で。