ミスから生まれた超個人的Fender遺産「Antigua」フィニッシュについて
こんにちは。スタッフの鹿毛です。
今回は僕がFenderの中でも個人的に遺産のような価値を感じている「Antigua」フィニッシュについて取り上げていきたいと思います。
初めて見たときは気が狂ったか色覚がおかしくなったかと思いました。ピックガードまでバーストしてますしね…。
残念ながら僕はアンティグア・カラーの楽器は所有していないのですが、褪色したアンティグアが実は好みストライクゾーンど真ん中なので虎視眈々と狙っています。欲を言えばオフセットが望ましいですね…。
タイトルにもある通り、実はアンティグアは「Fenderの製造工程上のミス」によって誕生したカラーリングなのです。
Fenderは1960年代後期のある日、”Coronado II”モデルをレモン・カラーにて製作していました。しかしボディバインディングの作業中に誤ってボディエッジを焼いてしまいます。
そこでFenderはこの奇妙なカラーリングになってしまった失敗作のボディを破棄せず、あろう事かヘッドストックにもレモン・カラーのエッジを焼く同様の加工を行います。そしてピックガードを同じカラーにペイントし、新たなカラーの誕生を祝して”Antigua”と銘打ち発表したのです。逞しすぎるぞ僕らのFender…。
それからFenderはこのフィニッシュが気に入ったのか、1970年代に入ると続々と他のモデルにも採用し始めます。
Fender 1978 Telecaster (Antigua/R)
こちらはマッチング・ヘッドではないですが、テレキャスターにアンティグアが採用されたものになります。
やっぱりこの色明らかにおかしいですね。魔力じみたものを感じずにはいられないです。
あくまで個人的な解釈にはなりますが、”いなたさ”の象徴とでも評するべきなのでしょうか…。Fender内の同じ「バースト」系でも大定番の地位を絶対的なものにしているサンバーストと比較して、明らかにルックスに締まりがないように感じられます。また(実は)バーストしているホワイト・ブロンドと比較しても、明らかに間の抜けたルックスに見受けられます。
ですがそこが良いんです。個人的には、経年でヤレた陶器のような色と質感になっていくところがたまらないです。3プライにトップコートのアンティグア、という仕上げのピックガードもたまりませんね。バーストの中にプライの段を踏んでバースト、なんだか夢に出てきそうですね…。
Fender 1979 Jazz Bass (Antigua/Maple)
少し前にビンテージを取り上げた際にも登場してもらったアンティグアのジャズベースです。
実は、Fenderはアンティグア・カラーの見栄えにかなりこだわりがあったらしく、プラパーツ類は全て黒で統一していたそうです(なお、テレキャスターモデルなどでニッケルやクロームのパーツが採用されている場合は例外)。このジャズベースもピックアップカバーやノブは黒になっていますね。言われてみると確かにコントラストが際立つような気がします。
Custom ShopやFender MIJシリーズ、Squierなどでのリイシューのモデルには白のパーツが採用されているものも見受けられます。個人的には白パーツの「輪郭のボケる」カラーリングもとても好みです。
ちなみにアンティグアは、Coronadoモデルで発表された当初は「リム」の黒に近い焦げ茶のような色がかなり深く、そこから「マスタード・イエロー」と評されていた深めの黄色にバーストしていくカラーリングでした。それが70年代に入ると中心部のマスタード・イエローはそのままに、リムがダーク・グレーのようなカラーに変わります。よく目にするアンティグアはおそらく70年代のものなのではないでしょうか。
さらに近年のリイシューのものになると、マスタード・イエローも姿を消しグレーからクリーム系のカラーへのバーストになります。個人的には「アンティグアでありながらアンティグアではない」と言わざるを得ないこのカラーリングは少し悲しいですが、アンティグアにはまだ一定の人気がある、と思えば悲しみも癒されます。
個人的にはFenderで1番「洒落た」カラーなのでは、と思っているので、僕もアンティグアを手に入れて「オシャレ」になりたいです…!
それでは。
Fender 1979 Stratocaster Left Hand (Antigua)