Alan Hamel ~Twisted Tele ピックアップの設計者~
Fender Custom Shopにおける最高機種を作り続けている”Masterbuilt”シリーズ。
一人一人のビルダーについて少しだけ深掘りしてみます。
アラン・ハメル氏はカスタムショップ創世記メンバーとして、2017年のカスタムショップの30周年を記念したプロジェクトである”THE 2017 FOUNDERS DESIGN PROJECT”に参加しており、ブラックスパークルが印象的なテレキャスターモデルをデザインしています。
ジェームス・バートンのファンであり、幼い頃からフェンダーのテレキャスターに魅力を感じていたそうで、フェンダー社に在籍していた頃もテレキャスターを特に多く制作したようです。
レンチに住んで馬を育てていたみたいと語り、ウェスタンモチーフを愛するカントリーボーイだったようで、初代マスタービルダー/カウボーイのマイケル・スティーブン(Michael Steven)に近い印象があります。
マイケル・スティーブンについてはこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/introducing-fender-masterbuilders/
プロミュージシャンとしてのキャリアも持っており、サウスカリフォルニアのいくつもの楽器屋で働きながら、昼はリペアで夜はギグといった生活をしていたようです。
フレッド・スチュアート(Fred Stuart)がフェンダー社に入る前に働いていた楽器店(偶然だそう)でリペアマン/ビルダーとしての腕を磨き、その後はシャーベル(Charvel)に入社。
その頃、すでにフェンダー社に在籍していたフレッド・スチュアートとギターリストとして度々共演することがあったようで、そんな縁もあって、フェンダーに入ることになったのではないでしょうか?
1992年、フェンダーカスタムショップに入社。
当時カスタムショップではスパークルフィニッシュのスペシャリストを探していたそうで、アランはそのスペシャリストとして採用されることになったそうです。
確かにこの頃のシャーベルのカタログには沢山のスパークルフィニッシュのモデルが掲載されていますね。
入社時の面接の印象をジョン・ペイジは
“優しく控えめでエゴイスティックな感じがしないので、カスタムショップの仲間たちにすぐに受け入れられるだろう”
と言っています。
ビルダーの間では仕事が“遅い”が、とてもユニークかつ芸術的なギターを作れるという評価だったようです。(これもマイケル・スティーブンに共通する部分を感じます)
J.W.Blackは
”彼のギターは非常に人気があった、細かなディテールに対しての精度と目が違う”。
Dan Smithは
”機械を扱うのが得意なのに芸術性が高いという珍しい組み合わせの才能を持っている”
と称賛しています。
ウェスタンテレキャスターや数々のアートギターなどを製作しますが、そんな中でもフェンダーで彼の残した大きなものの一つはピックアップの開発。
現在でもカスタムショップなどで使用されているツイステッドテレのフロント(Twisted Tele PU)はアランによりデザインされたものとなっています。
2000年にフェンダーを退社した後は、非常に仲の良かったフレッド・スチュアートと”A&F Custom Guitar Service”という工房を立ち上げています。
数年後に二人は袂を分かちますが、その後しばらくアランはピックアップの製作を続けていたようです。
66歳のアランはカリフォルニア州レッドランズに住んでおり、雑誌や車からバイクまで、自動車愛好家という自身のルーツにインスピレーションを求めながら、様々なデザインの仕事を手がけているそうです。(2017年当時)
写真はアラン・ハメル製作のBajo Jazzmaster。