Fenderの”Standard”への挑戦、そのこだわりについて

こんにちは。スタッフの鹿毛です。
今回は、現在「American Professional」シリーズへとその血を連綿と受け継いでいる”Standard”、その拘り、シリーズについて取り上げたいと思います。

Fender USA 1983 Elite Stratocaster (Cherry Sunburst/M)

ストラトキャスターにおいては、「The STRAT」や「The Walnut STRAT」、Americanを冠さない「Standard」シリーズや「Elite」シリーズなど、1980年代当時の音楽シーンに合わせて様々な”モダン”スタイルのストラトキャスターがFenderより登場していました。

Fender USA 2000 American Standard Stratocaster (Blonde)

満を辞して1987年のNAMMショーにて正式に登場した「American Standard Stratocaster」は、現代の”スタンダード”になっている9.5Rの指板に打たれたミディアムジャンボフレットや22フレットをはじめとして、1 11/16インチと通常よりも僅かに幅広なナット幅や2点支持のシンクロ・トレモロ、シャーラー製のペグなど、当時求められていたモダンスペックをこれでもかと詰め込んだモデルでした。
また、当時同時期に登場した「Elic Clapton Stratocaster」やその雛形でもある「Elite Stratocaster」にも採用されていた「TBX」サーキットも搭載されていました。後年に「TBX」サーキットは廃止され、トーン回路を結線しなかったり、取り除いたりする改造を施す当時の市場に合わせて、フルアップにクリックの入った「No-load Tone Control」サーキットに変更されます。写真のアメスタモデルは2000年製なのでNo-load Tone Control期のものになりますね。

Fender 1983 Telecaster Elite (Vintage White)

Fender USA 1988 American Standard Telecaster (White)

テレキャスターは少し後年、ストラトキャスター同様に「Standard」シリーズと「Elite」シリーズをラインナップしながら、1988年に「American Standard」が登場しています。
こちらも9.5Rにミディアムジャンボフレット、22フレット、1 11/16インチのナット幅、シャーラー製のペグ、TBXサーキットが採用されていました。テレキャスターならではの仕様としては、ブロックタイプの6連サドルが挙げられます。

ちなみに、ストラトキャスターもテレキャスターもヘッドのシェイプがリイシューモデルとは違うんです。


Fender USA 2000 American Standard Stratocaster (Blonde) – ヘッド


Fender Custom Shop 2000 1960 Stratocaster Closet Classic (Fiesta Red) – ヘッド


Fender USA 1988 American Standard Telecaster (White) – ヘッド


Fender 2007 American Vintage 1952 Telecaster (Butterscotch Blonde) – ヘッド

存在感のあるシャーラーペグも相俟ってヘッド自体が若干小ぶりなように見受けられます。また、デカール下の抉れもより深いように見えます。角が少し丸く落ちているのもそう見える要因かもですね。
しかしながらペグ自体に質量があるため、ヘッド重量に於いてはむしろアメスタの方が重さが感じられます。

「American Standard」シリーズはそれまでのモダンシリーズのように短命ではなく、現在までそのイズムが受け継がれるほどに長寿のラインとなりました。その理由は、Fenderが築いてきたトラディショナルなスタイルをとのバランスを守りながらデザインされたモデルだったからではないのかな、と僕は考えます。今でこそ、アメスタといえばという点をチェックすれば違いは一目瞭然ですが、全体のシェイプや機能を大きくアレンジすることなく、要所を抑えて新たな可能性をプレイヤーに提示した当時のことを考えると、それこそ新たな”Standard”による「美しい革新」だったのでは、と個人的に思います。

ちなみに、現在の「Professional」ラインに名を連ねているJazzmasterやJaguarには、「American Standard」モデルは登場していません。
登場していたらもっとJazzmasterやJaguarの存在が身近になったのかな、と思うと嬉しいようななんだか違うような、そんな気分になります。
American Standard Jaguar、きっとスライドスイッチの無いKurt Cobain Jaguarみたいなコントロールでムスタングブリッジにシャーラーペグ、9.5Rにミディアムジャンボフレット、的なスペックになっていたのでは、と思います。アメスタカラーラインナップのJaguar、これには想像が膨らみますね…。

「Professional」ラインだけではなく、「American Elite」の血を引く「Ultra」や、「Player」をアップグレードした「American Performer」など、Fenderの飽くなき市場への挑戦は現在まで続いています。今後どんな風なモデルが出てくるのか、面白い楽器、手に取りたくなるような楽器に出会えるのか、どれも僕はとっても楽しみにしています。

それでは。

Fender USA 1988 American Standard Telecaster (White)

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