Gary MooreとGreeny~Collector’s Choice #1として有名な悲劇のヒロインの歴史を追う~
こんにちは、スタッフ高橋です。
明日2月6日でGary Mooreが亡くなって11年が経ちます。
当時中学生の高橋は”Still Got The Blues”とJeff Beckの”Guitar Shop”が
世界で一番渋くてかっこいいと思っておりました。
ちょうどハマっていた頃に新聞で訃報を読んだのを覚えています。
めちゃめちゃショックでした…。
しかし今なお”ギターヒーローのお手本”と言っても過言でない程
アイコニックなギタリストとして輝きを放ち続けています。
さて、ゲイリー・ムーアのギターといえば皆さん何を思い浮かべますか?
サーモンピンクのストラト、ダブルブラックPUが乗った通称”Still got the blues”1959 Les Paul、
リアルタイム世代だとHamerやシャーベルの印象が強い方も多いのではないでしょうか。
しかし!
楽器屋さん的に…いやGibson Custom Shop屋さんにとっては間違い無く一択の質問です。
“Greeny”
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そうです、Collector’s Choiseの記念すべき第1弾として復刻されたあの’59レスポール、
モデル名で言いますと”Melvyn Franks”の元になった個体です。
Les Paulファンで知らない人はいないであろうほど有名な1本ではないでしょうか。
奇遇にも名前の通りのグリーンレモンになったボディトップ、リアPU付近の特徴的な塗装剥がれ、
逆さにマウントされたフロントPU、シャーラーペグ、リア/フロントでカラーの違うコントロールノブ…。
持ち主が変わってもすぐ”あのギター”とわかってしまう程にかなり特徴的な楽器ですし、
1目見たら忘れないはず。
さて今回の本題はここから。
「持ち主が変わっても」と書いた通り、旅多き人生を送っているこのギター。
しかし、実は毎回ちょっと悲しい別れを繰り返している”悲劇のヒロイン”なのです。
そのジンクスが始まったのは名前の元となった1stオーナーピーター・グリーンの頃から。
1966年にクラプトンの後任としてジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズに加入したピーター、
同時期にこの”グリーニー”を$300で入手します。
その後1967年にフリートウッド・マックを結成、セルフタイトルデビューアルバムを発売するも
1970年にドラッグの使用が問題を引き起こし脱退。
ソロアルバム”エンド・オブ・ザ・ゲーム”を発表するもシーンの第一線から退くこととなり、
ピーターは弾かなくなってしまったこのグリーニーを無料同然で2ndオーナーに譲ります。
後に現役復帰するものの、当時”これからいくぞ!”ってところからの転落を考えるとちょっと切ないです。
さてこのギターを次に譲り受けたのは今回のタイトルにもなりましたゲイリー・ムーアです。
当時ゲイリーはスキッド・ロウ脱退する、しないの頃で、直後自身のリーダーバンド
“The Gary Moore Band”を結成しグラインディング・ストーンをリリースしております。
78年にはこのギターでの名演と言われる”パリの散歩道”や1995年には
元オーナーのピーター・グリーンカバーアルバム”Blues for Greeny”も発売。
ゲイリーの相棒として定着してきた90年代にこの先を暗示するかのような出来事が起こります…
なんと輸送中にネックがボッキリ…修理痕が残ることになります。
以降また壊れるのを恐れメインの座を”Still Got The Blues”レスポール譲ったため
あまり持ち出しは多くなかったものの、大切に使用していた矢先…
2006年、なんと資金難に陥りGreenyはそのカタに売られることとなります。
なんとも悲しい運命です。
ピーターの購入時のお値段$300の数百万倍の金額でMaverick Musicに落札されたこのギターは、
同楽器店サイトで販売され3rdオーナーの手に渡ります。
入手したのはMelvyn Franks、プライベートギターコレクターです。
Collector’s Choice #1として登場したのは2010年、
彼が所有している時代だったためモデル名も”Melvyn Franks”だったわけです。
「お金持ちコレクターの手に渡った訳だし、大切に保管されていくことだろう」と思ったのも束の間。
2014年驚きの記事が目に飛び込んできました。
“カーク・ハメットがGreenyを購入。”
それはそれは大騒ぎになりました、当店では。
しかし何でまたこのタイミングでカークの手に…と思いインタビューを読み進めていくと
カークが売り手とのやり取りについて言及していました。
“(売却した)彼は金が必要だったし、こっちは多少良いディールで買えた”
なんとまたまた資金難のカタに売り飛ばされていたことが判明しました…。
切ない。
カークは”みんなも音を聴きたいだろうし出来る限りたくさん弾きたい”とコメントしていますし、
是非今後とも大切に弾き続けていただきたいと願っています。
悲劇のヒロイン、薄幸美人は応援したくなるとか、惹かれるとかよく聞きますが、
ギター界で「今度こそは永く大切にされてね」と願ってしまうランキング1位のギターです。
そして悲劇のヒロインの分身であるCollector’s Choice #1をお持ちの方は
是非実機の分まで可愛がってあげてください!
最後にとあるサイトでのアンケート”Greenyの相棒といえば?”アンケートの結果で締めさせていただきます。
1位 Peter Green…46%
2位 Gary Moore…45%
3位 Kirk Hammett…6%
あれ、100%にならない…と思ったら
4位 0ther…3%
この3%はきっと”Melvyn Franks”と回答してるはずですし、
職業は楽器屋さんです、絶対に。
それではまた!