George と Leoの終着点、G&Lについて ~中編その2/ジャズマスター、そして…編~
こんにちは。
今回は前回に引き続き G&L について取り上げていきたいと思います。
前回の最後に「Doheny」や「Espada」など新設計の楽器たちを」と言っていた通り、今回はそれらをはじめとした新設計モデルについて取り上げて行きたいと思います。
G&L 2019 Fullerton Deluxe Doheny (Sunburst)
まずは「Doheny」からです。基本的には形状通りジャズマスターを基にして設計されているのですが、細部にジャズマスターをブラッシュアップした仕様が盛り込まれていて、ただリイシューをするだけでは物足りない、と言ったG&L社の姿勢が伺えます。
このモデルはレオによる設計・制作は行われておらず、「レオの長年の研究に影響を受け、参考にして応用した」とメーカーでは述べられています。
このモデルの大きな特徴として、まず1つ目が新設計の「Wide-Bobbin MFD Single-coil」です。
ルックスはジャズマスターのそれと殆ど変わりはありませんが、MFD機構を搭載し、ワイヤーにはヴィンテージスタイルのフォームバー・ワイヤーが採用されています。
G&L内では見た目などの特徴がよく似た「Jumbo Single-coil MFD」と比較されるそうです。「Twang」な音色を狙って設計されたJumbo Single-coil MFDに比べ、Wide-Bobbin MFD Single-coilはジャズマスター特有の「Jangle(≒ジャラジャラした)」音色を狙って設計されているそうです。
2つ目は「Dual Fulcrum Vibrato」の採用です。ジャズマスター系モデルの特徴としてフローティング・トレモロ・ユニットも外せないと思うのですが、このユニットは僕が以前取り上げたように多くの問題を抱えていて、それならば、と自社開発のユニットを搭載した、というワケです。個人的には、オフセットモデルにシンクロタイプのトレモロ・ユニットを搭載してしまうなんて勿体ない…!とは思ってしまうのですがフローティング・トレモロの扱いにくさを考えたら残念ながら当然、と言ったところでしょうか…。G&Lスタイルの新設計フローティング・トレモロ、見てみたかったです…。
ちなみに「Doheny」という名称は、アメリカのカリフォルニア州オレンジカウンティの海岸「Doheny Beach」から取られていて、この海岸はサーフィンの聖地とも言われているそうです。サーフミュージックに用いられ名を馳せたジャズマスターのリイシューモデルにバッチリの名付けだと個人的には思います。
G&L USA 2020 CLF Research Espada (Natural)
次は「Espada」です。テレキャスターの角を全て落としたようなシェイプに、プレシジョン・ベースのようなスプリットタイプのピックアップ、そして「S」字の長いコントロールプレートに搭載された多数のスイッチ。こんな楽器に惹かれないワケがないですよね…。
Espadaの原型はFenderを退社したレオが新たにコンサルタント業のために1960年代後期に設立した「CLF Research」社にて制作されました。その後CLF Research社が設計・開発を行う形でMusic Man社にてレオが楽器やアンプを制作し出すにつれ、EspadaはCLF Research社の奥底で眠ることになりました。
その半世紀後、CLF Research社にあった当時のEspadaの設計・開発資料を基に、現G&L社CEOのDavid McLarenとJohn McLarenがEspadaの制作に取り掛かります。
Espadaのスプリットタイプのピックアップは1967-68年頃にレオが試作していたものが原型となっていて、それにレオ自身が後年開発したMFD機構が組み合わさっている、という状態になっています。これに僕はなんとも言えない気持ちになりました。後年の自身の開発が時を超えて組み合わさって、自身の死後にやっと完成し日の目を見る…。なんてストーリーを持つ楽器でしょうか。
ピックアップ・セレクターの他の2つあるトグル・スイッチは1つがパッシブで動作するもので「両ピックアップのシリーズ/パラレルの切り替え(2Way)」となっています。もう1つは9V電池×1で動作する「Off(スルー)/バッファー回路を通るロー・インピーダンス出力/高域がブーストされた出力(3Way)」となっています。ちなみにこのアクティブ回路はレオの試作時には単3電池が6本必要で、かつアクティブ回路のオフが出来ない、というものでした。単3電池を6本、というともはやちょっとした家電のレベルですよね。
さらにこのモデルはストラトキャスター編でも紹介した「PTB System Tone」も搭載されているので、困ってしまうほど非常に幅広い音作りが可能になっています。
Musicman 1978 Sabre II (Sunburst)
僕はてっきり、EspadaはMusic Man時のプロダクトを基にさらにブラッシュアップしたものだと思っていたので、これらの経緯を知った時は非常に驚きました。
Music Manのストップテイル・ユニットがG&Lの「Saddle Lock Bridge」に似ているのは、Fenderを退社後にCLF Researchで設計・開発をし、それを原型にしたユニットがMusic Manで採用されたものの、さらに改良を加え遂にG&Lにて完成させた、という道を歩んできたからなんですね。
Music ManのSabreやStingrayが、Espadaとコンセプトの共通点を持っているように感じるのも何らおかしなことではなかったんですね。ずっと1本の道を歩み続けていて本当にシビれます。
こんな歴史がある楽器だと知って、僕はEspadaが心から欲しくなりました。「CLF Research」という名称がモデル名に入っているのも胸が熱くなります。
そしてG&Lについて取り上げるのも次回がおそらく最終回、ベースについて取り上げられたら、と思います。
それでは。
G&L USA 2020 CLF Research Espada (Natural)