George と Leoの終着点、G&Lについて ~後編/ベース編~
こんにちは。
今回は前回に引き続き G&L について取り上げていきたいと思います。
前回の最後に「G&Lについて取り上げるのも次回がおそらく最終回、ベースについて取り上げられたら」と言っていた通り、今回はG&Lのベースについて取り上げて行きたいと思います。
G&L L-2000 Tribute Series (Sunburst/M)
まずは「L-2000」です。
この楽器は本国アメリカではなく、G&L監修のもとインドネシア工場にて生産され優れたコストパフォーマンスが強みの「Tribute Series」のモデルです。このTribute SeriesというラインナップはG&Lの他の楽器にもあり、USA製モデルの廉価ラインとして位置付けられています。仕様の違いで言えば、ピックアップを除いた電装系と、ネックをはじめとした塗装の質感(Tribute Seriesはサテン系の仕上げが採用されることが多い)などが挙げられるくらいで、それ以外に違いはないのです。
もちろんのことながら、USAラインの楽器では多様なカラーリングや高級感のあるメイプルトップの採用や、ハムバッカーのモデルでは他社製のピックアップを搭載しニーズに柔軟に応える、など差別化は図られているのですが、G&Lのイズムやエッセンスを感じるならTribute Seriesで十分過ぎるのです。
Musicman 2012 StingRay 4 (Black/Maple)
未だL-2000を取り上げていないのですが、もう少し脱線します。Music Man時代に於けるレオの最高傑作「StingRay Bass」を取り上げないことにはL-2000を語ることは出来ないと思うからです。
StingRayは、そのシンプルな設計と多彩なコントロールの絶妙なバランス感が何よりもの強みで、世界中様々なジャンル様々な用途で用いられる史上でも有数のベースだと思います。比較のために取り上げると、アクティブ仕様のハムバッカー・ピックアップと3バンドEQを搭載したプリアンプがStingRayという楽器のキモなのではと思います。
対してL-2000は、アクティブ仕様のハムバッカー2基に、おなじみ(?)の「PTB System Tone」を基軸に「ピックアップ・セレクター」「両ピックアップのシリーズ/パラレルの切り替え(2Way)」「Off(スルー)/バッファー回路を通るロー・インピーダンス出力/高域がブーストされた出力(3Way)」と前回取り上げた「Espada」と同じようなスタイルのコントロールとなっています。おそらくレオにとってこのレイアウトこそが辿り着いた「答え」だったのでは、と思います。ちなみにこのトグルスイッチ群のレイアウトはのちに「Tri-Tone System」と名付けられています。
1980年にレオ・フェンダーがG&L L-2000を発表したとき、彼は再び歴史を作る準備ができていました。
とメーカーでは述べられていますが、知名度ではStingRayに及ばないもののL-2000とStingRayはその後互いに意識しあいながらブラッシュアップを繰り返していきます。
例えば発売当時には3点止めだったジョイント部はStingRayはのちに4~6点に、L-2000は6点に変更されています。その他にも基本仕様がHHレイアウトのL-2000に倣い、StingRayには後年HHレイアウトの「StingRay HH」が発表されます。
またStingRayのリアハム1発仕様を意識したのかG&Lからは後年「Kiloton」というStingRayを鋭角にしたようなボディシェイプのリアハム1発仕様のベースが発表されます。
また、こんな楽器も登場しています。
G&L 1991 ASAT Bass Tribute (Black Sunburst/M)
こちらはG&Lのテレキャスターモデル「ASAT」をそのままベースにしたモデルです。つまりはテレキャスターベースですね。コントロールはL-2000と同じ「PTB System Tone」&「Tri-Tone System」のレイアウトとなっています。
ちなみに、エアロスミスのベーシスト「Tom Hamilton」はこのASAT Bassというモデルをとても気に入っていて、ASAT Bassを基にシグネチャーモデルが製作され現在はそれを使用しているようです。
全4回に渡って「G&L」を取り上げて来ましたが、本当に僕の琴線に触れる話が多く取り上げていてとても楽しく、また非常に勉強になりました。
レオが亡くなってレオの妻フィリスが会社を譲り受けた後、レオが厚い信頼を寄せていたJohn McLaren率いるBBE Sound社(同社のプロダクトはSonic Maximizerが有名ですね)へ経営が引き継がれます。
ジョンは今もレオの思想をとても大切にしていて、
G&Lは常に変化を厭いません。レオ・フェンダーは、ミュージシャンのための変革のシンボルだったからです。そして、何らかの変革を考えなければならない岐路に立った時、私たちはまず自分達自身へと問いかけます。レオだったら、この方法を選択するだろうか?と。熟考した答えがイエスであれば、私たちはそうしますし、ノーであればしません。“レオ・フェンダーが今日のG&Lを誇りに思える”と常に感じたいのです。
と述べています。最高ですね…。
そしてエレキ楽器の歴史の中であまりにも代表的な楽器であるテレキャスターやストラトキャスター、Music Man時代のプロダクトもですが、それを自身の手で超えようとするレオは月並みな言葉にはなってしまいますが本当にカッコいいですね…。
前回「Espada」を取り上げた際に「レオの開発・設計の思想はずっと1本の道を歩み続けていて…」なんて話をしましたが、ベースもやはり改良に改良を重ねられていて、”飽くなき”とはまさしくこのことだな、と思いました。レオは亡くなるその日まで楽器の開発を続け、楽器のプロトタイプを作り終えた頃に亡くなったそうです。
最後に、レオが亡くなる間際にレオの妻フィリスに告げた言葉を取り上げて終わりにしたいと思います。
「世界のミュージシャンのために、自分ができることはすべてやり遂げた」
それでは。
G&L L-2000 Tribute Series (Sunburst/M)