John Suhr ~世界最高峰のハイエンドギターブランド~ その5 最終回
前回の”その4″はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/john-suhr-4-2/
Fenderを離れ、独立するきっかけの一つには、後の共同設立者となるスティーブ・スミス(Steve Smith)に出会いがありました。
スティーブはフェンダーでのサーの苛立ちを見て、
“なぜ自身のブランドを作らないのか?”
と問いただします。
それに対してサーは、
“CNCルーター(コンピューター制御の木工加工機械)のプログラミングが出来ないこと、それとお金だ。”
と答えます。
CNCプログラミングは、木材をどの速さでどのように削るか等の細かい機械の設定を決める作業。
金銭面に関しては、まだ幼い息子を含む家族のことも考えると思い切ったことに出ることもかなり考えたそう。
そこで、FenderやRickenbackerでのCNCプログラマーであったスティーブ・スミスは”CNCプログラムは自分に任せないか”とサーに持ちかけます。
それでプログラミングは解決出来そうなので、サーにはCAD(コンピューター上の図面)でのデザインだけは出来るようにしてもらえれば良いことになりました。
お金の面は、出資者を募ることで解決しました。
出資者は親類が多かったそうですが、一般出資者の中にはなんとピーター・フランプトン(Peter Flampton)もいたそうです。
そして、ついに1997年にSuhr Guitar (正式名称:JS Technologies Inc) を設立。
立ち上げの頃に、日本のある代理店は、Pensa-Suhr時代に積み上げていた高い評価もあったため、
“あなたの作るギターはどんなものでも全て取り扱わせてもらいます”
と伝えていたそうです。
サーは自身のスキルが一番に発揮出来るのは、ギターの直接の製作などではなく、R&D(研究開発)やデザインすることと信じており、様々な問題を解決することや研究に没頭することに喜びを感じていたそうです。
“To me, there is a reason for everything.”
“全ての事象には原因がある”
と言っており、サーギターのデザインは、まさに科学的根拠に基づいた精巧な作りとなっています。
サーギターでは全てのプロセスを自社工場で完結させています。
そして特徴的なのが、フェンダー時代からサーが提唱していた”CNCルーター”を使用した木工加工の”高精度”。
生産効率を考慮すると、CNCルーターでは粗加工して、残りを手作業というのが、比較的一般的な使用方法のようですが、サーでは可能な限りCNCルーターが使われており、 “ほぼ完成”と言えるところまで整形しています。
それには、共同設立者でもあるスティーブ・スミス(Steve Smith)のオペレートによる徹底した細かなCNCプログラミングが肝となっているそうです。
”一度に削る量”と”その速度”等、細かな設定をする必要がありますが、そのセッティングによっては、木材の焦げや欠けなどの症状も起こり得る可能性があり、
材の種類、硬度、木目など全ての要素を考えて設定するそうです。
特にネックは、オペレートに相当数の工程の設定と時間をかけて、人の手では作り出せないレベルの精度で、正確なシェイプに作り上げられているそうです。
高精度に”均一化”されていることで、逆に木材それぞれ”個性”を引き出すことを可能にしていると謳っています。
またサーギターならでのパッシブのノイズリダクションシステム”SSCII”。
”電源由来のハムノイズ”を軽減するために開発されており、ピックガード内に内臓されています。
ノイズを消し過ぎ無いバランスに気をつけて造られたそうです。
余談ですが、現在の配線アッセンブリは元々フェンダーに勤めていた後藤誠輝氏(Seiki Goto)が設計しているそうです。
熟練工による確かな技術と最新の機械による精密さ+作業効率を上げた生産体制の下、
現在は、ハイエンドギターの代表的ブランドとしての地位を築くことになりました。
~終わり~