Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 8
前回はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/larry-dimarzio-7/
“The Guitar Lab”での仕事と音楽学部での仕事を兼業していたラリー。
その頃くらいまでには、ラリーはある程度ヴィンテージギターの目利きが出来るようになっていたそうで、売買をすることで少し収入の足しにしていたそうです。
また近所の建築現場から集めたスクラップから作業台を制作して、自身のビジネスを開始しました。
仕事はもちろんギターのリペア。
ラリーはスタテン・アイランド中のミュージックショップを周り、リペアが必要なものが無いか聞いて回りました。
ショップの中の一つ、グリニッジ・ヴィレッジにある”Bill Lawrence’s”。
誰もいない店先にはBill Lawrence(ビル・ローレンス)が一人。
“The Guitar Lab”で働いていたことを説明して、リビルトしたテレキャスターを見せます。
そのテレキャスターは
-ネックを細くリシェイプ
-指板のラディアスを9.5Rに修正
-ミディアムジャンボタイプにリフレット
-フロントのピックアップをオープンのフルサイズハムバッカーに変更
という改造が施された1本。
ハムバッカーピックアップは、以前”The Guitar Lab”の箱から回収したスクラップから作ったもので、グレッチのフィルタートロンのマグネットを使用していました。
それを見たビル・ローレンスは
“君とは競うよりも一緒に働きたいな”
とコメントします。
自分のギターそのものへの加工やワイヤリングなどに関して自信はあったものの、ハムバッカーの制作に対しては自身の腕は大したものでは無いと思っていたラリーは、それを聞いて心底驚いたそうです。
ラリー的には”ピックアップは直せるけどあくまで実験的な程度のものと考えていた”にも関わらず、ビルは大変感心していたようでした。
またビルはフレットワークにも非常に興味を持ったので、すべてのプロセスを彼に説明しました。
余談ですが、ビルはこの時に聞いたフレットレベリングと研磨技術を、設計に協力したギブソンの”L6″モデルに取り入れました。
ビルがダン・アームストロングと仲違いをして別れたというような話もしつつ、二人の話はピックアップに移りました。
ラリーはギブソンのピックアップより高出力になるグレッチのマグネットが気に入っていると説明をすると、ビリーは箱から2つの磁石を取り出してラリーに渡し、
“それを引き離してみな”
やってみると、それはラリーが見たことのある中でも一番磁力の強いものでした。
その正体はセラミック磁石。
ギターのスピーカーでは一般的ですが、ギターのピックアップにセラミックが使用されているのを見たことはありませんでした。
それからビルは、新しいピックアップを取り付けた薄いホロウボディのFramusを取り出しました。
JBLスピーカーを搭載したトランジスタアンプに接続して、ピックアップとコイル・スイッチング回路のデモを始めました。
クリーンでかなりブライトなサウンド。
実はラリーはソリッドステートのギターアンプのファンではなく、JBLスピーカーも嫌いだったので、ビルがこのサウンドのどこが気に入っているのか理解出来なかったそうです。
しかしそこで、自分のアイデアを売り込む方法を良く知るビルの得意な(?)プレゼンテーション。
磁石のデモンスレーションは素晴らしく、彼の直列/並列(シリーズ/パラレル)のスイッチ切り替えは革新的と思えました。
彼のギターは音量が大きい点は気に入りましたが、サウンド自体は少々耳障りに感じたそうです。
それからビルにテレキャスターの委託販売を頼み、さらに修理品探すためにいくつかの店を訪ねました。
~続く~