Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 4
前回はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/larry-dimarzio-3/
“Charlie LoBue (チャーリー・ロビュー)が彼のリペアショップで働く人を探している”との連絡を受けたラリー。
チャーリーはDan Armstrongの店を経営していたCarl Thompson(カール・トンプソン)と共に”The Guitar Lab”というリペアショップを経営していました。
ラリーは自身の作ったストラトをチャーリーに見せるとその場で即採用。(後日分かったそうですが、チャーリーはそのストラトの構造や配線などは全く理解していなかったそうです)
当初の給料は、1日に10ドルと2つのホットドッグ。
それから週2~3回の頻度で働きにいきました。
“The Guitar Lab”での大半の作業は、セットアップ、ネックの調整、弦の張り替え、リフレット、少々の電装系の処理でした。
ラリーが主に担当した電装系の仕事は、
1 レスポールデラックスからミニハムバッカーを摘出して、フルサイズのハムバッカーに交換
2 テレキャスターのフロントを摘出して、フルサイズのハムバッカーに交換
というものでした。
この改造は本当に多く持ち込まれたようで、現在でもこのタイプのモディファイされたギターがよく出回っています。
当店にも丁度このミニハムとハムの ビフォーアフターの2本が在庫しています(2024/9/30現在)。
“The Guitar Lab”はギブソンとフェンダーの両方の認定修理店だったこともあり、正規の部品を直接購入することができました。
約半年間、ショップはラリーとチャーリーだけで切り盛りされました。
チャーリーはリフレットの方法をラリーに伝授。
そして一月も経たないうちに、リフレットは半日でこなせるようになり、多くの作業や用事もこなすことができるようになりました。
当時のギブソンとフェンダーはともに、最終セットアップに多くの時間を費やすことはなく、出荷時の状態はお世辞にも良いものとは言えませんでした。
プリCBSやノーリン時代のギターが新しいギターよりもはるかに優れていることは界隈の常識となっており、ギブソンもフェンダーともに粗悪な木材の使用、ポリウレタンの採用、ピックアップのマグネットサイズの変更など、ほぼすべての間違ったことを行っていたという認識でした。
ラリーも当時からヴィンテージのギブソンやフェンダーをアメリカの芸術品と考えていたそうです。
(もちろん全てのヴィンテージが完璧とは言えず、中には良くないものもあったが、非常に優れた個体が多いと感じていたと言っています)
ラリーショップで働くようになってから最初の1か月が終わる頃に、店で提供していたサービスをひとまとめのパッケージのようなものに変更していきました。
例えば、新品のレスポールがセットアップのために店に入ってきたら、
- ピックアップカバーを取り外し(ピックアップを弦に近づける)
- フレットの擦り合わせ(ギブソンのフレットワークは特に悪かったそうです)
- .09での弦を張り替え
- ネックの調整
- オクターブ調整
- ピックアップの高さや各ネジの調整
これらをまとめたセットアップをオファーしたそうです。
当時の価格は$35.00。
本来はギブソンとフェンダーが出荷時に行うべき作業ですが、それが行われなかったために、ショップには新品で購入したギターがそのままに持ち込まれることもあり、店は大いに繁盛しました。
~続く~