Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 7

前回はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/information/larry-dimarzio-6/

フレットワークを多くこなしていたラリーですが、給料はまだ1日に10ドルと2つのホットドッグ。

もっと仕事をしたいラリーがチャーリーに何かないか?と尋ねると、チャーリーは何年も作業台の下に放置されていた壊れたピックアップが入った箱をラリーに手渡し、
“これを直してくれ”と言いました。

そこには数十台もの主要メーカーのあらゆる種類のピックアップ。

以前、壊れたストラトに付いていたシングルコイルを”手”でリワウンドしようとして失敗していたラリーは、まず自宅にあるもので唯一自動回転するものだったレコードのターンテーブルを使用してみますが、こちらもマグネットワイヤーが切れ続けてしまい失敗。

最終的には、古いギルバート・エレクター・セット・モーターを使用。

悪戦苦闘しながらもなんとか巻き終えたシングルコイルですが、”ひどい”音だったこともあり、ピックアップのリワウンドはそれ以来諦めていました。

そんなピックアップの苦い経験がありながらも、ラリーは箱一杯のピックアップ修理に挑むことに。

まずは冷間半田接合とケーブル類のチェックをします。(冷間半田接合は半田ごてが適切な温度になっていない場合に、半田の溶解が不完全になり、接合面の濡れが不十分になること)

中にはコイルの最終数ターンを剥がして再半田することやリード線を交換するだけで直せるものもありました。

結局、動作が正常なコイルと同時期生産の部品をうまく組み合わせて再構築することでほとんどのピックアップを直すことが出来ました。

オーナーのチャーリーの基本的なやり方は、ピックアップが機能しない場合は、新しいものと交換するだけというものでした。

ラリーはピックアップの交換はヴィンテージギターのコレクター的な価値を損なうものと考えており、交換するだけということを悩ましく思っていました。

修理して動作するようになったピックアップをショップに持ち帰ると、チャーリーはラリーに10ドルを与えました。

ラリーは分解したものすべてをメモに取り、可能な時はワイヤーとマグネットのサンプルを保管しました。

このピックアップの作業は非常に”ため”になったようで、ブルックリン工科大学での電子工学の教育、大学でエンジニアリングの仕事、それらの経験と知識が全て繋がり始めたのを感じたそうです。

そして、コイルのワインディングの問題を解決できるかもしれないアイデアを思いつきました。

方法の解説は言葉では難しいの割愛しますが、ローラースケートのボールベアリング(タイヤの中心部の回転するところ)とプラスチックの棒とを上手く使うことで、ハムバッカーのコイルを巻くことに成功します。

多数の有能な従業員も入ってきたことで”The Guitar Lab”での仕事が減り続けたため、ラリーはリッチモンド大学のワークスタディプログラムに応募。(学内での勤務)

そして音楽学部で仕事することに決まりました。

ラリーが入った時、主任教授がたくさんのケーブルに接続されたシンセサイザー(初期のMoog)を手に入れたところでした。

ラリーは自身の知識を活かして、古い電話交換手(写真参照)が使うようなスイッチングシステムをストラトの5wayスイッチを多数使い作り上げました。

スイッチングシステムが上手く稼働することで、ケーブルを頻繁に抜き差ししないでもサウンドを変えることが可能になりました。

何でも自身の手で作り上げてしまうラリーでした。

~続く~

Follow me!