PRSのUSA製ミドルクラスラインナップ「S2」について
こんにちは。
今回はタイトルにもある通り、PRSのUSA製ミドルクラスラインナップ「S2」について取り上げていきたいと思います。
PRSに於いて「S2」ラインは、本国アメリカ製の高級な「Core」ラインと前回取り上げたアジア(韓国、インドネシア)工場製の廉価ライン「SE」との中間ラインとして2013年に登場しました。
しかしながら、他のメーカーにありがちな上位ラインのモデルを安価で生産出来るようにしたただのミドルクラスという印象ではなく、CoreラインやSEとは異なるアプローチからPRSというメーカーのデザインや設計の理念・思想を伝えようとしているように僕は思います。
それでは早速楽器を取り上げていきます。
PRS 2015 S2 Custom24 (Ice Blue Firemist)
まずは「Custom24」のS2版です。前回のSEでも最初に取り上げましたが、やはりPRSの王道といえば「Custom」シリーズだと思います。王道ゆえに全てのラインから登場していて、仕様や設計理念などを比較するのにもってこいです。
個人的にまず取り上げたいのはトップの形状です。Coreラインのカーブトップとは異なり、またSEのフラットトップや独特のカーブでもなく、S2 Customに採用されたのは左右非対称のベベルド・コンターでした。なお、現在S2から登場しているモデルには全てこのタイプのベベルド・コンターが採用されています。
個人的な感覚にはなりますが、PRSのCoreラインのモデルやレスポールなどを抱えた時に感じる実測重量以上の”重み”や、ボディの”角張り”が殆ど感じられず、例えるならディンキーシェイプのストラトキャスターを抱えた時のフィット感に近いものを感じました。取り回しと音周りのバランス感を基に述べるなら、S2 Customは非常に心強い味方になってくれるのでは、と思います。
また、カラーリングのラインナップからも目が離せません。Coreラインのような杢目を活かしたトランス系のフィニッシュもカッコいいのですが、取り上げたIce Blue Firemistの様なつぶしのものも多く生産されていたのが印象的です。この楽器もそうですが、つぶしのものはヘッドやネックに至るまで全て1色でまとめられている、というのも個人的に好感度の高いポイントです。ざっと調べただけでも、Red/Blue/Purple/Green/Platinum/Chacoarlなどのメタリックカラーがあり、またOrange/Pinkなどのよりポップなつぶしカラーのモデルもあった様です。
個人的にはつぶしカラーのPRSが非常に好みでして、トランス系のフィニッシュよりもトップのカーブがより強調されている様に見え、それに光が当たるのがたまらないのです…!
そしてここからは、S2の最も(個人的に)アツいところであるS2にのみラインナップされているモデルたちについて取り上げたいと思います。
PRS 2017 S2 Vela Satin Limited (McCarty Tabbaco Sunburst)
まずは「S2 Vela」です。このモデルはPRSでは初のオフセット・ボディで、また専用ブリッジとして開発された”PRS Plate-Style”ブリッジを搭載し、非常に力を入れて開発されたモデルであることが伺えます。
またピックアップ・レイアウトもPRSの通常ラインでは唯一のフロントシングル/リアハムとなっており、リアもタップが可能という至れり尽くせり仕様です。ミドルクラスモデルとしては先発機種の「Starla」のピックアップがリアに搭載されているのも系譜を感じて個人的には嬉しくなります。
またこのモデルは非常に軽量であることも特徴の1つで、なんと上記の楽器は2.52kgでした。めちゃくちゃ軽かったのをよく覚えています。
PRS 2008 Private Stock #2052 Mira (Faded Fire Red)
PRSの最上位ライン「Private Stock」によって「Mira」です。このモデルはS2ラインからリリースされたものではないのですが、このモデルの基になった「Mira」は現行ではS2からリリースされています。またこの楽器を一目見た時の衝撃は凄まじくいつか必ず取り上げたいと思っていました。
この楽器がNAMM Showにて発表された2009年にはS2自体がまだ無かったので、現行のS2 Miraとは仕様が異なっていますが、当時のMiraとは材こそ違えど殆ど同じ仕様なのです。フラット・トップに6弦側からボディ下側まで大きく取られたコンターが特徴的で、アッセンブリは2H/マスターボリューム/トーン/3wayセレクター/コイルタップ用ミニトグルでピックガードマウントです。ピックガードはPVSらしく木材で制作されていて、ピックガードの形状も当時のMiraと全く同じです。
Paul Reed Smithの楽器制作に於ける原点でもある、ダブルカットのLes Paul Junior/Specialをより洗練したようなボディシェイプがミドルクラスのモデルにも採用されているのが個人的には非常に心を動かされるポイントです。Miraのシェイプ、カッコいいですよね…!
PRSのCoreラインからは、メーカーの威信や誇りを懸けてデザインや開発が行なわれている、ということがひしひしと伝わってくる様です。しかし一方、S2などのミドルクラスラインの楽器からはPRSの楽器に対するアイデアや遊び心、はたまた楽しさの様なものが伝わってくる様です。
ブランドイメージや誇りに慢心することなく、それらをさらに高め続けながら飽くなき探求の道をも歩き続けるPRSだからこそ、こういったモデルが生まれるのではと思います。僕はこれが非常に喜ばしく、こういった少し廉価でアイデア勝負なラインナップがあるからこそPRSというメーカーがより輝いて見えるのでは、と思います。
それでは。
PRS 2008 Private Stock #2052 Mira (Faded Fire Red)