リッチライトという素材

今回は、リッチライトという素材について考えてみたいと思います。2011年頃からギブソンがエボニー指板の代替材として採用した事で、名前を聞いた事があるという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?

リッチライトは1943年、アメリカのリッチライト社が開発した紙材に樹脂をしみ込ませた素材です。クラフト紙を幾重にも重ね手作りされているのが特徴で、その配合は認証紙と再生紙を合わせて約65%、フェノール樹脂が約35%となっています。製造工程は、樹脂をしみ込ませたロール紙を裁断し、人手により一枚一枚を互い違いの方向に重ね、板状に積み重なった材料に均一な熱と圧力をかけると、樹脂が固まり、層になった紙同士が結合します。紙の繊維配列の不均一性により表面の独特な質感があり、指板に使われているものはカーボンを混ぜ込む事で黒い色になっているようです。

フェノール樹脂は主にクラフト紙を接着する役割を果たしていますが、原料はフェノールとホルムアルデヒドで、人工的に合成されたプラスティックの一種となっています。ちなみにフェンダーのパーツに採用されていたベークライトもフェノール樹脂の商品名で、その歴史は1907年まで遡りますので、随分と昔から様々な産業で使用されてきた素材なんですね。

ではギターの指板材としてはどうか、という所が気になってくるかと思います。見た目はぱっと見たところは分からないですが、注意して見てみると違いがわかります。まずはエボニー材には木が呼吸する為の導管があるのですが、リッチライトは紙の繊維が見えるのみで導管はありませんので、一番分かり易い違いだと思います。その為、リッチライト指板にオイルを塗っても染み込みません。エボニー材は天然素材ですので、木目により色味や密度にムラがありますが、リッチライトは全て均一です。その特徴から、リッチライトは湿気や気温などの影響を受けにくい素材と言えると思います。硬度や重さで音に違いが出てくる可能性は考えられますが、どちらが良い音かという問題については指板だけの要素では決められないと思います。きっと何十年か後になって、違いが出てくるものなのかなあ、と楽しみにしています。

エコやSDGs等が注目される今、ギターにも新素材の波が押し寄せてくるかもしれませんね。
それではまた。

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