Stephen Stern ~アーチトップスペシャリスト~ 4
前回はこちら
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/stephen-stern-3/
完全受注生産となる2機のアーチトップのみを製作していたステファン。
“Ultra”を月に1,2本程度製造していましたが、その下位モデルとなる”Elite”は少なく、実際に製作したのは4本のみとなっていたそうです。(相当レアですね)
顧客数を増やすために、1997年には”Elite”モデルの約半額程度となる3000ドル代に値段を下げた”Deluxe”を新モデルとして追加します。(こちらは合板メイプルボディ)
さらにダキストモデル達に加えて、ステファンはフェンダーオリジナルとして”Classic Rocker”という新しいモデルを開発し、1999年1月のNAMMショーに出展します。
ロカビリースタイルから触発されて作られたモデルで、ほぼ”Gretsch”という印象です。
フレイムメイプルを使用した17インチ幅のホロウボディ、fホール、チェッカーバインディング、DeArmondピックアップ、Bigsbyトレモロ等が採用されています。
当時の価格は$5799となっており、ダキストの2機種に続き、フェンダーで三番目に高額なモデルとなっていました。
こちらも受注生産でしたが、これはオーダーが非常に少なく、実際に製作したのは10本程度だそうです。
ちなみに2017年のPrestige Collection(マスタービルダー達がそれぞれの創造性と技術を持って自由に製作したものを展示する年に1回行われるコレクション)で、ステファンはこの”Classic Rocker”を再び製作しています。
1998年、ジミーが亡くなってから”D’Aquisto”の名前を使用することの権利の問題があり、Fenderは”D’Aquisto”モデルの生産を中止することを決定しました。
そこで翌年の1999年、フェンダー社はアーチトップのギターの権威であるRobert Benedetto (ロバート・ベネデット)とライセンス契約を交わし、フェンダーカスタムショップで”Benedetto”、”Guild Benedetto”の製作を行うことになりました。
ステファンはジミーに続き、ここでまたアーチトップのギターの権威であるRobert Benedetto (ロバート・ベネデット)と出会うことになります。
前述したブルーギタープロジェクトの中の一人として選ばれた世界的名工であるロバート・ベネデット。
ステファンは共にBenedettoギターの製作にも携わることになり、フェンダー側の責任者として6~9人のスタッフを率いつつも、ベネデットからの指導も受けることになりました。
ベネデットは本能的かつたいした道具も使わずに製作していたジミー・ダキストとは異なったタイプで、現代的で治具やルーターなどの工作器具も積極的に取り入れていくタイプでした。
しっかりした設計図に基づいた製作で、ステファンはベネデットから1台のギターを作る工程、カービング、製剤の仕方、削り方でどのように音が変わるか等々、丁寧に教えてくれたそうです。
かなり”本能的”で機械や工具に頼らないジミーとは正反対だったようですね。
ベネデットは1999年から2006年の比較的長い間フェンダー社に籍を置きました。
ベネデットはフェンダー傘下であったGuildで、”Guild Benedetto”としてギルドの代表機種”Artist Award”のリファインや新機種となる “X700 Stuart”を制作。
“Artist Award”は当時日本円でなんと844,000円。
平均価格が20万円台だったギルド製品の中でもぶっちぎりの高額で販売しました(“X700 Stuart”も485,000円と高額)
2000年代に入るといよいよ”Gretsch”の生産も始まることになりました。
~続く~