Stephen Stern ~アーチトップスペシャリスト~ 5
前回はこちら
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/stephen-stern-4/
Robert Benedetto (ロバート・ベネデット)を迎えて、いわゆるジャズギターのアーチトップを製作し続けていたステファン。
2000年頃からはマスタービルダーのYuriy Shishkovもそこに加わり、Benedettoの生産に携わっていたそうです。
そんな中、フェンダー社は2002年にグレッチのライセンスを得ることになりました。
まずは日本で生産を開始しましたが、2004年にはGretsch Custom Shopを発足し、”G6136CST” White Falcon と”G6120WCST” Nashville Westernの2つのモデルの生産を開始します。
当初グレッチの生産はカスタムショップの1階、ベネデットは2階で生産されており、そのためステファンは1階(ベネデット)、ユーリは2階( グレッチ)と振り分けられたようです。
月々8本のBenedetto、8本のGretschを生産していました。(それはかなり大量だったとステファンは言っています。)
2階にいたステファンはベネデットと並行してグレッチの製作の手伝いもしていたそうですが、なんとベネデット本人もグレッチの製作を携わっていたこともあったようです。(ステファン談)
2006年にはベネデットがフェンダー傘下から離れたため、フェンダーカスタムショップでの”Benedetto”は生産完了。
残ったのはGretschのみとなり、ステファンはフリーになったため、ユーリと入れ替わるようにグレッチ製作に移ることになります。
ベネデットを製作していた2階部分も空いたため、グレッチの製作もそのまま2階へと移ります。
そこでステファンはまずトリビュートシリーズの製作を始めます。
“Brian Setzer Tribute 1959 6120 Nashville”
限定59本生産され、日本国内には3本のみ入荷。
ブライアン・セッツァーがストレイ・キャッツ初期に使用していた1959年製6120を復刻。
ヘッドのデカール、ブラック・キャット,”ラッキー・レディーのステッカー、ダイス・ノブ、ブリッジ台座下に張られたカーペットテープ等の仕様、塗装の剥げやエスカッションの欠けなどが、レリック加工により細部に渡り完全再現。
ヘッド裏にはブライアン・セッツァー直筆のサインも入っていました。
当店にも1本入荷したことがありましたが、ルックスはもちろんのこと、アーチトップ職人であるステファンならではの素晴らしいトーンが記憶に残っています。
“G6129BZ Billy Zoom Custom Shop Tribute Silver Jet”
このギターはなんと実機をレントゲンで内部の測定をしての製作。
Billy Zoom(ビリー・ズーム)本人は、このギターに関して
“そんなに期待していなかったが、ツアーのために渡されたプロトタイプをサウンドチェックの時に取り出して弾いてから現在に至るまで、元々持っていたヴィンテージのギターは使ったことが無い”
とこれ以上ないであろう賛辞を語っています。
2008年には、ディーラーを呼んでサマーショーをフェンダー内で開催。
トレーニングルームにバー、テーブル、椅子などを入れてショールームのようにしたそうです。
そこで、いわゆるキーディーラーたちから認識され、本格的にカスタムショップの知名度が一気に上がり、雪だるま式にオーダーが入ってきました。
それまでのグレッチカスタムショップは驚くほどに規模が小さく、少ない人数で(実際はほとんどステファンのみ)製作をしていましたが、ここからビルダー2~3人が新たに加わりました。
~続く~