Todd Krause ~アーティスト・ビルダー9~

前回はこちら
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/todd-krause-8/

あるインタビューで
“最近で印象に残っているギターは?”
という質問に対して、トッドは”KATANA”と答えています。

このKATANAですが、Dan Smithによりデザインされたギターで、フェンダージャパンで1980年半ば頃の短期間のみ生産されていたモデル。

NAMM 2016のショーピースとしてトッドが製作に当たりました。

写真を見て分かる通り、フェンダーらしからぬシェイプのギター。

トッドは長年製作してみたかったということで製作。(実際はCEOのAndy Mooneyからのリクエストだったようですが)

単純な再生産ではなく、
“もし1950年代にこのギターが作られたら?”という想像を元にシェイプや面取りを変えて、トッドなりのアレンジを加えて製作されました。

製作にあたり当時のテンプレートは残っておらず、完全に一から作り上げて、カラーやスペックなど全てのことを自身で決められたということもあり、このギターを記憶に残るものとして挙げています。

2023年には老舗ショップの”Music Zoo”と協力して非常に面白いプロジェクトにも参加しています。

下記ブログでも紹介していた通り、↓
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/todd-krause/

トッドはフェンダー入社以前となる1981年からCharvelに所属していました。

木材加工の部門に配属されたトッドは、そこでランディー・ローズのギターを製作したことでも知られるMike Shannon(マイク・シャノン)と共に働くことになりました。

当時のCharvelでは、ある一定期間働き、自身の価値を証明した従業員は、自分自身のカスタムギターを製作することが可能でした。
その際のルールは、
1, 原材料費は自己負担とすること
2, 就業時間外において製作すること
という二点だったそうです。

そんな中、トッドは自身のために2本のギターを製作しました。
そして、このプロジェクトでその2本をCharvel ‘Employee Guitar’としてその2本を復刻生産することになりました。

  1. 1982 Charvel ‘Employee Guitar’ Built by Todd Krause

当時1年強という長い期間をかけて製作した1本。
こちらはその頃バーズアイメイプルにハマっていたようで、ボディ&ネック共に1ピースバーズアイメイプルが使用されています。
指板はエボニー、各ピックアップのOn/Offスイッチなど、実に80sらしいスペック。
ネックはトッド自身の大きな手に合わせて幅の広いものとなっています。
またこのギターを最終組み込みとセットアップしたのは、なんと当時の同僚で現マスタービルダーのStepehn Stern(ステファン・スターン)。
ちなみにトッドはこのセッティングを一度も変えていないそうです。
外観コンディションも綺麗に保たれており、サビや小さな擦り傷などはあるようですが、塗装の剥がれや大きな傷もないようです。
リイシューとして製作されたバージョンでは、そういった軽度のダメージが再現されています。

  1. 1983 Charvel ‘Employee Guitar’ Built by Todd Krause

こちらは上述のギターの次に製作された1本。
こちらも実に80sらしいスペック。
ボディはNAMMショーのために作られた”Allan Holdsworth”モデルのプロトタイプのものを使用しており、非常に軽量なバスウッドとなっています。
ちなみに搭載しているフロイドローズを購入するために1週間分強の給料を支払ったそうです。
ネックは1本と同様にトッド自身の大きな手に合わせて幅の広いものとなっています。
こちらはメインのギターとして愛用されたようで、1本目よりもダメージが見られます。

上記2本には付属品としてトッドのパーソナルコレクションであるRobin Trower(ロビン・トロワー)とVan Halen(ヴァン・ヘイレン)のカセットがそれぞれ付いています。(レッドの方にロビン・トロワー、ホワイトにヴァン・ヘイレン)

なんとも粋な付属品ですね。

余談ですが、このシリーズでステファン・スターンがシャーベル時代に製作したギターも同様に復刻されています。

アーティストビルダー/マスタービルダーとしての名声と評価を得ているトッドですが、近年でもこうした新たな試みや挑戦を続けています。

これからもアーティストのためのギターや意欲的なギターの製作を続けていくことでしょう。

~終わり~

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