Todd Krause ~アーティスト・ビルダー8~

前回はこちら
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/todd-krause-7/

ブラックストラトの製作に当たってトッドは、

“オリジナルのギターには元々ハムバッカーが載せられたための埋められたザグリや接着剤や木クズをつかて埋められたXLRジャックの後などがありました。

もしこれが20,000ドルの復興版だとしたら、それら全てのあらゆるディテールを再現するつもりでした。

しかし、そのレベルで再現するためには”マスタービルト”としての販売することになり、そうなるとコストも跳ね上がってしまいます。

デヴィットはこの復刻モデルに対して、コレクターのアイテムではなく、あくまでプレイヤーたちのためのギターであって欲しいという願いを反映するために、あえて”チームビルト”としての生産としました。

ネックシェイプ、短くなったトレモロバー(約10cm強)、追加のトグルスイッチ/ピックアップセレクター、7.25Rの指板など、プレイアビリティやサウンドに直接関わるものをすべて複製。

ピックアップにはフロントに’54、センターにはグレーボビンの’69、リアにSeymour Duncanのスペシャルピックアップという、オリジナルピックアップの音色の特徴を完璧に再現しました。

Relic(NOSとRelicの2バージョンが製作されています)は、実機によく似てはいますが、他のトリビュートシリーズで見られるような、ごく小さなダメージをすべて複製するようなマニアックなレベルの再現はしていません。”

上記のようにコメントしていますが、Relicに関しては出来る限りの再現をしたようです。

オリジナルは、ファクトリーオリジナルのブラックラッカーがサンバーストの上にペイントされており、Relicモデルもそれを再現しています。

XLR の穴が埋められた実際のプロセスを再現することはありませんが、オリジナルの外観に近づけるためにレリックバージョンではその傷の外観を再現。(これはコスト面を考えた上でのこと)

またフィルからは、
“プロトタイプのピックガードが適切な黒の色合いではない”
という指摘を受けました。

トッドはそれに対して

“おいおい、俺らはプラスチックそのものを作るわけじゃなくて、注文しているだけだ。
それで受け取ったのがこのプラスチックってだけのことだろう”

という割と批判的な姿勢だったそうですが、最終的にはフィルに根負けした形で、ついにはプラスチックの素材を特定して再現するまでに至りました。

ちなみにせっかく作ったこのプラスチックは他のモデルに使用されることはなかったため、ブラックストラトのみのワンオフのパーツとなりました。(生産当時)

ブラックストラトの再現における興味深い点の一つはネックでした。

この時に復刻されたネックは、もちろんオリジナルの本人使用機に現在装着されているネック。

これは1983年製のレイシューストラトから取られたもので、ダン・スミスによりデザインされたネックでした。

’57のネックは本来ソフトVシェイプで、80年代当時のリイシューモデルでは、丸みのあるCシェイプに近い形になっていました。

当然現在のカスタムショップでは’57は忠実に再現されていますが、リイシューモデルが開始された当初はあくまで全体の”雰囲気”を再現するにとどまっていたため、このようなネックとなっています。

ブラックストラトの製品説明文には
“thin-shouldered ‘C’ neck shape,” with a 790″ to .870″ taper.”
と表記されています。

短いトレモロアームは、通常のアームをただ短くしたものではなく、曲がる部分が通常のものとは異なっています。

フロントとセンターピックアップは、1950年代にレオ・フェンダーのピックアップを巻き始めたアビゲイル・イバラ女史によって巻かれています。

リアピックアップはSeymour Duncan “SSL-5 Custom”モデルで、30年以上前にセイモアがデヴィッドのために個人的に巻いたピックアップを再現しています。

当時、”SSL-1C”と呼ばれていたこのオリジナルのユニットは、現在のSSL-5のプロトタイプとなりました)

こうして、トリビュートよりもはるかに安価でありながら、外観とスペックがかなりオリジナルに近い形で復刻されたブラックストラト。

トッドは2007年半ばに12本(RelicとNOSを6本ずつ)のプロトタイプを製作し、1 年後にファイナルバージョンが承認されました。

そのプロトタイプ製作段階でもフィルからの非常に粘り強い要求が多く大変だったようですが、彼の妥協な提案のおかがで価格とクオリティのバランスが非常に良く取れたギターが完成したとトッドは満足したようです。

~続く~

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