029 『ラブソング』
029 『ラブソング』 グッ、ナイト
12月に入り、クリスマスソングが
師走の街に流れ始める頃、
突然に青ちゃんが連絡してきた。
「話したいことがあるんだ」と言う。
それは、とてもめずらしいことだった。
いつも用があるのはコチラ側からで、
めんどくさがり屋の青ちゃんは、
それを斜に構えて聞く。
そんなんが、僕らのいつもの図だったから。
新宿南口のルミネ前にある
ファーストキッチンの2階で待っていると言う。
とりあえず急いで駆けつけると、
窓辺のカウンターで煙草をくゆらせながら
カッコつけている青ちゃんを発見。
「どうしたのさ、何かあったの?」
息急ききりながら横顔を覗き込んだ。
「コレ、読んでくれ」と、
ぶっきらぼうに1枚のペラ紙を差し出すと、
青ちゃんは、相変わらず夜景に目をやっている。
その少し、クシャっとなったペラ紙に目を落とすと、
何やら詩のようなものが書いてある。
どうやら歌詞のようだ。
それも、ラブソングっぽい。
「青ちゃんが作ったの?」と聞くと、
「ああ」と言うお答え。
考えられないことが起きていた。
“青ちゃんが歌詞を書くなんて !?”
青ちゃんっていったら、何もしないことで通っていた。
どんなに期待しても、本人の気が向かなきゃ
ギターさえ弾きやしない。
「青ちゃん、家でギターの練習とかしないの?」
って、聞いたことがある。
「しねぇよ!何で?」
って、平気で返された。
ステージングで
「ここは青ちゃんが前に出てな」
って、冨士夫が頼んでるリハの場面があった。
本番になり、その場面がきたとき、
前に出て行くべき青ちゃんが
シカトして、そっぽを向きながら引っ込んでいる。
あわてた冨士夫は、
引っ込みかけた体勢で再び前に出る始末。
コレじゃ、いつも冨士夫だけにスポットが
当たってしまい飽きてしまう。
「青ちゃん、一曲でいいから何か歌ってよ」
って頼んだら、
「ヤダよ!トシが歌えばいいじゃん」
って、とんでもない返しかたをする。
“それほどまでに嫌なんだ”
っていうのが伝わったので、
それ以来、僕も何も言わなくなっていた。
その青ちゃんが !?…である。
かたくなにカッコつけて37年。
もうすぐ“シジュウ”になる声を聞く手前で、
初のラブソングを書いたのだ。
それが、いま、ここにある。
この、少しクシャっとしたペラ紙がまさしくそうだ。
これは、心して読まなければならないだろう。
本当は、思いっきりニヤけたいところだが、
心を無にして、あらゆる雑念を払ったら、
寄り目になりそうだった。
“青ちゃんはいま、恋をしているんだ”
読んでみて、そう思った。
とたんに、腹の奥底のほうから
得体の知れない想いが沸き上がってくる。
いけない!
一言でも茶化したら、この世は終わるだろう。
「曲は?…できてるの?」
このタイミングで青ちゃんを見る
勇気がなかったので、
クシャ紙に目を落としながら聞いてみた。
「ああ……だいたいな」
いま煙草を消したばかりなのに、
新たな一本に火をつけると
落ち着かないように煙をはき、
そう答える青ちゃん。
この辺で、コチラのザワザワ感はなくなってきた。
代わりに何て表現したらよいのだろうか…
めったにない高揚感に包みこまれる。
こう言っちゃなんだが、
カッコ先行で音楽をやっていた青ちゃんが、
本気になったような気がした。
まあ、僕としては、
最初にそれを見せてくれたのが、
自分だったっていう状況に
悦に入ってたのかも知れない。
……とにかく、嬉しかった。
「すっごく、良いよ!」って、
「すっごく」を意識して言ったのを憶えている。
当然、冨士夫も喜んだ。
自分の曲以上に楽しんで、
いろいろとアレンジをしていた。
チコ・ヒゲ風に言うと、
心に残る歌には風景が付いているのだ。
さしずめ、僕にとっての冬の景色は、
この時の青ちゃんの歌といったところだろうか。
新宿南口のルミネ前の舗道で立ち止まり、
対面にあるファーストキッチンの
2階の窓を見上げると、
窓越しに煙草をくゆらせながら
夜景を眺めている青ちゃんが映る…。
“かなわぬ夢に、うつつをぬかしちまったぜ…”
クシャっとしたペラ紙にあった詩が
メロディになって流れて行く…。
冬に生まれて、冬に逝っちまった、
まるで冨士夫とは対局にいる青ちゃん。
キースの誕生日が命日なんて、
冨士夫の差し金かも知れないね。
12月も半ばになると、
そんな青ちゃんのことを思い出す。
ほらっ! 気がついたら、また1年が終わるよ。
「 グッ、ナイト」
ゆっくりお休み下さい…青ちゃん。
なんて、まるで、そんな気分なんだ。
(1989年/冬)
PS. 青ちゃんの命日は12月18日。その翌日になっちゃうけど、19日にやるイベントや、26日のイベントの中でも青ちゃんを追悼したいと思います。その場にいるみんなが忍んでくれれば、調子にのった青ちゃんが、ストーンズ・ファンクラブ会長の池田さんにヒョウイするかも知れません。今年もあとわずか、こうなったら全てを来年にかけて、どんちゃん騒ぎで締めくくりましょう!?
ロックをころがせ!STONES NITE
2 week continuation
Japan Rolling Stones F.C Presents
ロックをころがせ!STONES NITE Vol.8-1
2015.12.19(Sat) SHIBUYA-REX
OPEN 17:50 START 18:10 Adv ¥4,000 Day ¥4,500
出演:
■THE BEGGARS
■加納秀人(外道)※Special Guest
■大久保初夏 ※Guest
■The Ding-A-Lings(Vo.Gt.オス ex.ルージュ)
■藻の月(Vo.Gt.George ex.ウイスキーズ、CANON)
■ニューバビロニアンズ(Vo.Gt.Joe Kids ex.THE PRIVATES)
■VENTILATORS
■Slave Sisters
MC:池田祐司(JRSFC会長)
Japan Rolling Stones F.C Presents
ロックをころがせ!STONES NITE Vol.8-2
THE BEGGARS 2nd Album 発売記念 Speclal!
2015.12.26(Sat) SHIBUYA-REX
OPEN 17:30 START 17:50 Adv ¥4,000 Day ¥4,500
出演:
■THE BEGGARS
■木暮shake武彦(RED WARRIORS)※Special Guest
■松尾宗仁(ex.ZIGGY)※Special Guest
■三国義貴※Special Guest
■THE PRIVATES
■SHOKA OKUBO BLUES PROJECT
■美歩(ex.パパイヤパラノイヤ、ルシール)
■ブライアン片山
■大久保ノブオ(ポカスカジャン、ワハハ本舗)
■O.A.:The VIBRATIONS
MC:池田祐司(JRSFC会長)